【東方SS】チートレーム

2010/3/29に東方創想話に投稿したSSです。
 


『チートレーム』



「いたいよう、いたいよう」

 その悲しげな泣き声を聞いて、霊夢はぴたりと立ち止まった。
 人里へ買い物に出かけた、帰り道でのことだ。ちぎれ雲がちらほらと青空に浮かぶ春らしい天気で、どれ折角だからのんびりと散歩気分で帰ろうか、とぶらぶら道を歩いていたところであった。
 立ち止まってすぐに、後悔した。何となく面倒事になる予感がしてきたのだ。やっぱり無視して帰ろうか、と思ったが、

「いたいよう、いたいよう」

 泣き声はますます悲痛になって霊夢の耳に届き、足を鈍らせる。
 結果、

「ああもう、しょうがないわねえ……!」

 霊夢は舌打ち混じりに呟き、買い物籠を腕に提げたまま街道を離れて草むらに踏み込んだ。泣き声の方向に見当をつけて歩きだし、雑木林の中へと足を踏み入れる。

「いたいよう、いたいよう」
「はいはい、今行くから待ってなさいっての」

 泣き声に答えるでもない小さな声で呟きながら、霊夢は木々の間を縫うように進む。
 そうしてしばらく歩いて泣き声がだいぶ近くなってきたとき、木々の隙間で何かが揺れているのが見えた。木漏れ日を透かして光る、二枚の翅。

「妖精、か」

 さしたる感慨もなく呟き、霊夢は止まらずに進む。
 そうしてようやく、泣き声の源が見えてきた。予想通り、幼児と同じぐらいの背丈の妖精が、痛い痛いとぴーぴー泣き叫んでいる。何をそんなに痛がっているのかと思えば、細い足がトラバサミに挟まれていた。お約束な光景だなあ、と霊夢はため息を吐く。

「いたいよう、いたいよう」
「分かったからじっとしてなさい」

 声をかけながら近づくと、妖精はびっくりしたように振り向いた。涙に濡れた茶色の瞳が霊夢に向けられ、大きく見開かれる。
 次の瞬間、

「いやーっ!」

 と、先ほどよりも甲高い悲鳴を上げ、妖精が必死に翅を振るわせた。しかし片足がトラバサミに挟まれているために飛び立てず、すぐにバランスを崩して地面に叩きつけられる。それでますますトラバサミが足に食い込んだらしく、妖精は目を見開いて絶叫する。

「何をやってんだか……」

 霊夢は呆れてぼやきながら、妖精のそばにしゃがみ込む。妖精はまたひきつった悲鳴を漏らし、殴られるのを恐れるように身を縮め、細い腕で頭をかばう。
 しかし霊夢は構うことなくトラバサミに手をかけた。

「じっとしてなさいよ? 暴れるともっと痛くなるわよ」

 淡々と忠告しながら、霊夢はトラバサミを観察する。バネ仕掛けの、歯がないタイプだ。誰が何を捕まえようとして設置したものかは知らないが、かなり頑丈な上に通常の物よりも少々複雑な機構になっているらしい。多分この妖精も自分で何とかしようとはしたのだろうが、外し方が分からなかったらしい。

「……面倒くさいわねえ」

 霊夢は舌打ち混じりに呟くと、ビクビクしている妖精には構わず、袂に手を差し入れた。もしものときのためにといつも携行している霊符を取り出す。それを見て妖精がまた悲鳴を上げかけたが、

「動かないの」

 小声で叱りつけると、びくりと震えて硬直した。霊夢は符をトラバサミの縁に張り付け、周囲を極小の結界で囲む。妖精の足にまで結界が及んでいないことを確認し、

「破っ」

 霊夢が念ずると、結界の中で符が爆発した。至近距離の爆音に、妖精がぎゅっと目を閉じる。

「よし、と」

 霊夢は結界を解き、一部が破壊されたトラバサミに手を触れる。狙い通りに壊せたらしく、あっさりと外れた。爆発が結界の中だけに留まったおかげで、妖精の足にも爆発による怪我はない。
 霊夢はまだ目を閉じて震えている妖精の肩をポンと叩き、

「ほら。もう大丈夫よ」

 ぶっきらぼうに言ってやると、妖精は恐る恐る目を開けた。壊れて外れたトラバサミと霊夢とを、信じられない物を見るような表情で交互に見る。間抜けな顔だな、と軽く吹き出しつつ、霊夢は言ってやった。

「運が良かったわね、あんた。このトラバサミ、歯はついてないから大した怪我もしてないみたいだし」

 持ち主には悪いことをしたが、元々妖精を捕まえるために仕掛けた罠ではないだろうし、運が悪かったと思って諦めてもらおう。

「さて、と」

 霊夢はため息混じりに呟いて立ち上がった。それを見てまたビクリとする妖精に向かって、しっしっ、と手を振ってやる。

「ほら、さっさと行きなさい。これからは足下に注意することね」

 霊夢が言ってやると、妖精はようやく正気に立ち返ったらしく、目を丸くしてコクコクと頷いた。それからちらちらと霊夢を気にしつつも後ろを向き、翅を振るわせて宙に飛び立つ。
 と思いきや、すぐにバランスを崩して傾き、べちゃりと地べたに叩きつけられてしまった。足の痛みのせいで上手く飛べないらしい。

「あちゃー……」

 額を押さえる霊夢の前で、妖精はぷるぷると震えながら身を起こした。泥だらけになった自分の姿を呆然と見下ろし、すぐに大声で泣き喚き始める。

「いたいよう、いたいよう! 大ねえ、大ねえーっ!」
「ああ、うるさいってば……もう」

 耳を塞ぎ顔をしかめ、霊夢は舌打ちをする。誰か押しつけられる奴はいないか、と周囲を見回したが、こんなときに限って誰も通りかかる様子がない。
 泣き続ける妖精を前に、さてどうしたものか、と霊夢は少し悩む。
 別段、助けなければならない理由はない。もう符を一枚使ってしまったし、気まぐれの親切にしては十分すぎることをしてやったはずだ。それにこれだけ大声で泣いていれば、その内仲間の妖精などが通りかかって助けてくれるだろう。そもそも妖精なんて死んでもその内生き返るようないい加減な生き物なのだから、放置したところで全く問題はない。
 だから、ほっぽりだして帰ってしまってもいいと、自分でも思うのだが。

「……ああ、全く」

 ぼやきながら、霊夢は泣き続ける妖精のそばにしゃがみ込んだ。

「面倒よねえ、本当」

 ぶつくさ言いながらも妖精の体を抱えて立たせ、服についた汚れをあらかた払い落としてやる。涙に濡れた目を丸くして驚いている妖精に、しゃがんだまま背を向ける。

「飛べないぐらい痛いんじゃ、歩くのも無理でしょ。おんぶしてあげるから、乗りなさいよ」

 少し躊躇うような間を置いて、妖精はおずおずと肩につかまってきた。重みはほとんど感じない。これなら買い物籠を持ったままでも、特に問題なく背負っていられそうだ。

「あんたのお家はどっち?」

 歩き出しながら問いかけると、小さな声で「わかんない」と答えが返ってきた。霊夢はため息を吐く。

「罠にかかった上に迷子か。つくづくお間抜けねえ、あんた」

 言ってやると、妖精はまたぐずり始める。霊夢はうんざりしながら、

「いちいち泣かないの。すぐに仲間のところに連れてってあげるってば」

 言い聞かせると、泣き声は小さくなった。代わりに、肩に回された腕の力が少しだけ強くなる。鬱陶しいなあ、と思いながら、霊夢は妖精を背負い直す。
 そうして、ぐずり続ける妖精を適当になだめたりおざなりに励ましたりしながらしばらく林の中を歩いていると、

「どう、見つかった?」
「いないー」
「どこ行ったんだろー」

 と、舌っ足らずな声で騒ぎ立てる数人の声が聞こえてきた。もしかして、と思いながら足を早めると、すぐに予想通りの光景が見えてきた。
 輪になって集まっている、数人の妖精たち。その内の一人、緑の髪の妖精は霊夢の顔見知りだった。

「ちょっと、そこの大助」

 仲間内の一部で定着しているあだ名で呼びかけると、大助……もとい大妖精が、きょとんとした顔でこちらに振り向いた。

「あ、霊夢さん。こんにち」

 と、挨拶しかけて、霊夢に背負われている妖精に気がついたらしい。大妖精は目を丸くして駆け寄ってきた。

「霊夢さん、どうしてこの子と一緒に?」
「あっちの方でトラバサミに引っかかってぴーぴー泣いてたのよ。あんたの知り合いだったのね」

 霊夢が大妖精に背を向けると、妖精は「大ねえ、大ねえ」と泣きじゃくりながら大妖精に向かって腕を伸ばした。
 それを丁寧に抱き留めてやりながら、大妖精が優しく囁きかける。

「よしよし、もう大丈夫だよ。痛かったねえ。……冷やしてあげなきゃ。誰か、チルノちゃんを呼んできて」

 泣く妖精をなだめつつ、他の仲間に指示を出す。相変わらず妖精のくせに落ち着いた奴だなあ、と霊夢は少し感心する。
 大妖精はしばらく、小さな妖精を抱きかかえたまま慰めるように背中をさすってやっていたが、ふと、

「霊夢さん」

 と、真剣な顔を霊夢に向けてきた。

「なに?」
「この子を連れてきてくださって、ありがとうございました。みんなで遊んでたのに、いつの間にかいなくなってて……心配してたんです」
「あっそ。だったら今度は鎖にでも繋いでおきなさいよ。まったく、迷惑なんだから」

 ぷらぷらと手を揺らしながらぼやく霊夢を見て、大妖精がおかしそうに笑う。霊夢は少しムッとした。

「なによ」
「ああ、いえ。なんだか前の台風のときに、『ここにいると危ないぞ』って霊夢さんが忠告して下さったのを思い出しまして」
「そんなことあったっけ?」
「ありましたよ。ほら、神社の境内で、わたしがチルノちゃんとかくれんぼしてるとき」
「知らないわね」
「そうですか……」

 大妖精は少し残念そうに目を伏せたが、またにっこり笑って霊夢を見上げ、

「霊夢さんって、やっぱり親切な人なんですね」
「はあ?」

 のほほんとした大妖精の言葉に、霊夢は顔をしかめた。

「別に、親切とかじゃないわよ。単にその子の泣き声が鬱陶しかっただけだって」
「ええと、鬱陶しいなら普通は放っておくなり追っ払うなりするんじゃ……」

 苦笑する大妖精の言葉に、「だめだめ」と霊夢は首を振った。

「んなことしたらお茶が不味くなるでしょうが。泣くならわたしがいないところで泣けってのよ。全く面倒くさい……」
「そういうものですか……」

 大妖精は釈然としない顔で首を傾げる。
 と、腕に抱かれていた妖精が、「大ねえ、大ねえ」と呼びかけた。

「え、なに? ……うん、うん。そっか」

 何事か耳打ちされた大妖精が、一つ頷き返してから霊夢の方を向く。

「霊夢さん、この子が『ごめんなさい』って言ってます」
「ん? なにが?」
「えっと、助けてくれたのに怖がっちゃったから、って」
「ああ」

 そういえば随分怖がられていたような気もする。しかし霊夢は別段気分を害することもなくぴらぴらと手を振った。

「別にいいわよ。ナメられるよりはよっぽどマシだわ。あんたらが怖がってくれた方が、仕事もやりやすくなるしね」
「そうですか?」
「そうそう。そもそもわたしにとっては、あんたたちなんて的当てゲームの的と大して変わんないし。謝られたり感謝されたりしても困るわよ」
「的当てゲームの的、ですか……」

 さほどショックを受けた様子もなく、大妖精は目を伏せて、何事か考え始める。
 やがて顔を上げると、どことなく悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。

「霊夢さん。その内、今回のお礼をさせて頂きますね」
「は? いらないわよそんなの」
「そう仰らずに。楽しみにしててくださいよ」
「いらないって。妖精のお礼なんて、嫌な予感しかしないわよ。泥団子でも持ってくるつもり?」

 無愛想な霊夢の言葉に、大妖精はなおも何か言い募ろうとしたようだったが、後方から「大ちゃーん」と呼びかける声が聞こえてきたために、結局は口を噤んだらしかった。
 これ幸いと霊夢が空に舞い上がると、またすぐに大妖精の叫び声が聞こえてきた。

「霊夢さーん! いつか、ちゃんとお礼をしますからー!」

 しつこいなあ、と苦笑しつつ、霊夢は答えを返すことすらせずに空を飛び続ける。

(お礼、ねえ)

 お酒でも持ってきてくれたらありがたいのにな、と思いつつ、あの大妖精に限ってそれはないか、と首を振る。
 まあ、他のよりも多少真面目とは言え、妖精は所詮妖精。今日のことなど遊んでいる内に忘れてしまうだろう、と考えて、霊夢はさして気にも留めなかった。

 それからしばらく経ってたまたま大妖精と会ったとき、彼女は特に何も言ってこなかった。霊夢の方でもその頃にはこの件のことをすっかり忘れていたため、何かを要求するようなことはなかったのである。
 そうして、それから更に半年ほど経ったある夜のこと。



「ふふふ、来たわね霊夢! こんなに早いとは思わなかったわ!」
「んー、まあね」
「このレミリア・スカーレットが織りなす二度目の異変……吸血鬼らしく幻想郷の処女という処女を集めてウハウハしようという計画を事前に察知するとは、さすが博麗の巫女と言ったところかしら」
「前にも増してやってることがくだらないわね」
「きゃーっ、助けて霊夢ー!」
「……ところであそこで檻に入ってる紫、なに?」
「……いや、わたしも知らない内に入ってて……いくら出てけって言っても出ていかないし……」
「いやーっ、早くしないと血を吸われちゃうーっ! ゆかりんったら永遠に清らかな少女だからーっ!」
「……まあ、あのバカのことは放っておくとして」
「そうしてもらえると助かるわ」
「ともかくこんなんでも一応異変なんだから、あんたぶっ飛ばして解決させてもらうわよ、レミリア」
「ノンノン。今のわたしはレミリア・スカーレットではない」
「は? じゃあ誰よ」
「レミィ=リ=ア=ウー=ショジョスキー三世と呼びたまえよ、ミス・レイム」
「なにその設定」
「ふふふ。同志にはヒネリコ=アッキーナ=ハンショクスキーとチャン=ケロ=スワッピ=イケニエスキーもいるわよ?」
「どうでもいいし」
「ともかく始めるわよ霊夢! 幻想郷の処女たちを守りたければ本気でかかってきなさい!」
「はいはい」

「それじゃあまずは手始めに、通常弾幕から」
「夢想封印」
「……いきなりボムとは無粋ね。まあいいわ、ここは一つスカーレットシュートで」
「夢想封印」
「……ここに至ってもなお、そんなにボムを温存してたとはね。咲夜は何をやってたのかしら。ええと、グングニルを」
「夢想封印」
「……さすがにそろそろ弾切れでしょ。不夜城レッドで決め」
「夢想封印」
「……全世界ナイトメア」
「夢想封印」
「……霊夢?」
「夢想封印」
「ちょっと」
「夢想封印」
「あの」
「夢想封印」
「だから」
「夢想封印」
「聞いて」
「夢想封印」
「……」
「夢想封印」



「ひどいわ、いくらなんでもひどすぎるわ。あんまりよ」

 ズダボロになってしくしくと泣いているレミリアを前に、霊夢はうんざりとため息を吐いた。もうかれこれ一時間も前からこの調子である。

「ちょっと、レミリア。いい加減泣きやんでよ。仕方ないじゃない、わたしだってこんなことになるとは思わなかったし」
「嘘よ!」 

 ガバッと跳ね起きつつ、レミリアが非難するように叫ぶ。

「霊夢は全部計画してたんだわ! 何もかもわかった上で、わたしが半年間かけて練り上げたこの『幻想郷処女異変計画』を台無しにしようと目論んだのよ、そうに決まってるわ!」
「……うん。まあ内容聞いた瞬間台無しにしてやりたくなったのは否定しないけど」
「やっぱり! ああ酷いわ霊夢、二人の愛はどこに行ったの!」
「最初からないわよ、んなもん」

 ぼやくように言いつつ霊夢がため息を吐くと、レミリアはまた大声で泣き喚き始める。
 さすがにうんざりしてきた霊夢に、寄り添う影が一つ。

「ああ霊夢、助かったわ。あなたは今日一人の少女の純潔を救ったのよ!」
「夢想封印、夢想封印、夢想封印」

 必殺のボム、三連発。紫が悲鳴を上げて転げ回る。

「痛い、愛が痛いわ、霊夢!」
「うるさいってのよ! そんなに喰らいたいならあと百発ぐらい喰らわせてあげましょうか!?」
「いやだわそんな、初めてなんだから優しく」
「夢想封印、夢想封印、夢想封印」
「痛い痛い痛い……と言いますか、霊夢?」

 紫が不思議そうに首を傾げた。

「どうして今日に限って、そんなにたくさんボムを持ってるのかしら?」
「んー……それがねえ」

 霊夢が頬を掻きながら首を傾げる。

「なんかね。道中で飛び出してきた妖精が、弾の代わりにばらまいていくのよ」
「なにを?」
「エクステンドアイテムとボムを」
「……なるほど、道理で早いと思ったら」

 端的な答えに、紫が感心した様子で頷く。

「でも、どうして?」
「さあ」
「何か心当たりは?」
「いや、全く」
「事前に根回しでもしてたとか」
「んな面倒臭いこと、するわけないでしょ」
「そうよねえ」

 紫が思案げに目を伏せる。

「そもそもあの数の妖精全員に根回しなんて、かなり慕われている者でも相当難しいでしょうし」
「そういうことよ」

 霊夢は肩を竦める。

「ま、妖精のすることだしね。単なる気まぐれのお遊びでしょ」
「納得いかねぇーっ!」

 と、騒ぎながら床の上を転げ回るのは、今日一番とばっちりを喰らったレミリアである。

「なんなのよそれ、何がどうなってるのよ! ちくしょう、自分だけズルして無敵モードかよ! 最高に勃起モンだぜってか、このエロ巫女! 三本目の足なんて邪道なんだからね!」
「わけわかんないっての」
「うーっ、やだやだ、こんなのやだーっ! 折角久しぶりに霊夢と思いっ切り遊べると思ったのにーっ!」

 怒りと嘆きのあまり幼児退行を起こしかけているらしい。レミリアはじたばたと手足をばたつかせて床を転げ回る。
 霊夢は盛大にため息を吐いた。

「だからさー、もういい加減泣き止んでってば。わたしもさすがに無粋すぎたかなあとは思ってるし」
「だったらボムなんて使わなければ良かったじゃない!」
「もらった物を使わないのはもったいないでしょ」
「ひどいわーっ!」

 レミリアは床を叩きながら泣き伏す。霊夢はうんざりしながら、

「あーはいはい、分かった分かった。だったら今夜一晩はあんたの相手してあげるわよ。それでどう?」
「本当!?」

 レミリアが顔を輝かせて立ち上がり、「イヤッホゥ!」と手を振り上げて立ち上がった。

「そうと決まれば話は早い! 咲夜、咲夜! 祝宴の準備をしてちょうだい! あとあれだ、下の毛採取とかの準備を」
「ちょっと、変なことしないでよ? まったくもう」
「よかったの、霊夢?」

 何気なく問いかけてくる紫に、霊夢は肩を竦めた。

「いいわよ、別に。異変の内容が内容だけに罪悪感は全く湧かないけど、さっきも言ったとおりさすがに今回のやり方は無粋だったと思うし」

 霊夢は頬を掻きつつ、

「それに、目の前であんなギャンギャン泣き叫ばれちゃあね……泣く子と地頭には勝てないわ」
「なるほどね」

 紫は感心したように呟きつつ、

「ところで、霊夢?」
「ん?」

 霊夢が振り向くと、紫の目から一粒、水滴がこぼれ落ちた。

「怖かったわ、とても」

 無表情の霊夢に、紫はそっと寄り添ってくる。手に握った目薬の小瓶をさりげなく開いた空間の裂け目に落としつつ、

「怖い夢を見そうだから、今夜は一緒にいてくれない?」
「……」

 かくしてこの夜、霊夢は異変解決史上最短記録を打ち立て、余ったボムを一つ残らず紫にたたき込んだ。



 <了>
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