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【東方SS】鈴仙様のあそこの銃

2009/1/9に東方創想話に投稿したSSです。
 


『鈴仙様のあそこの銃』



 永遠亭の廊下の隅っこで、鈴仙様のパンチラ写真がわたしの前に厳かに差し出された。

「……なにこれ」
「月例のブラックマーケットで500てゐ払って買ったんだよ」

 誇らしげな顔でそんなことを言っているのは、幼馴染の妖怪兎だ。私同様永遠亭で生まれ育った兎の一人で、普段は警備隊の一員として働いている。いつまで経ってもガキみたいな無邪気な顔をしてる奴だ。
 もっとも、ガキみたいなのは顔だけで、下半身の方はもうすっかり妖怪兎のオスらしさを獲得しているみたいだけど。

「で、なんでそんなのをわたしに見せるわけ?」
「お前も鈴仙様好きだって言ってたじゃん」
「あれはそういう意味じゃないっての。っていうかわたしメスですから、メス」
「そんなん知ってるよ。いつから一緒にいると思ってんだお前」

 馬鹿な奴だなあ、と言いたげな幼馴染の顔を、思いきり殴りつけたくなる……が、止めておいた。わたしみたいな力のない兎が警備隊の肉体派兎なんか殴ったら、手の方が痛くなるだけだと思うから。
 だから殴る代わりに、盛大な溜息をついてやった。

「お、なんだよ。分かってねえなあお前、いいか、このパンチラ写真はただのパンチラ写真とは違ってだな」

 わたしの反応をどう受け取ったものか、このバカはそのパンチラ写真がシチュエーション、アングル等様々な観点から見ていかに芸術的かということを事細かに説明し始めた。わたしはそれを聞き流しながら、もう一度ため息をついてやる。

 ブラックマーケット、というのは、永遠亭の隅っこにある一室にて毎月頭に開かれている、兎たちによる兎たちのための、兎たちだけが立ち入りを許される秘密の市場のことである。
 そこでのみ通用する通貨「てゐ」を使って、様々な物品の取引を行うのだ。「てゐ」はもちろん我らが団長(なんで団長と呼ばれているのかは誰も知らない。とにかく団長だ)因幡てゐ様の名前から取られており、人里でも使える普通の賃金と一緒に、毎月の働きに応じて支給される。
 ブラックマーケットで取引される品は様々だ。妖怪の山から流れてきた河童の発明品もあれば、一介の兎ではとても手が出せないような、人里産の美術品などもある。わたし自身、そこで何度も化粧品やら誰かが拾ってきたらしい外の世界の雑誌やらを購入している。
 そんな闇市場でも一番の人気商品が、俗に言う永遠亭三大美女関連のグッズである。三大美女、というのは、永遠亭の最高権力者でもある蓬莱山輝夜様……通称姫様と、その従者である八意永琳師匠、それから目の前の写真の被写体でもある鈴仙・優曇華院・イナバ様である。
 彼女等のグッズはかなりの高額で取引されている。今この男はパンチラ写真が500てゐだったと言ったが、これは平均的な成人オス兎の月給の半分ほどだ。グッズとしてはこれでも安い方である。以前極秘裏に入荷された散髪後の姫様の髪が一房闇市場に流れたときは、50000てゐというとんでもない値段で競り落とされたと聞いている。「てゐ」は月々の働きに応じて支払われる他にも、外部との取引で功績を上げた者などにも支給されるので、結構な貧富の差が発生するのである。
 ちなみにそういった高額な私物系の流通元は、あろうことか姫様だという噂である。興奮するオス兎どもをこっそり覗き見てて楽しんでいらっしゃるのだろう。さすが、外の世界で数多の男を袖にしたという噂の魔性の女はやることが違う。ちなみに、永琳師匠がこういった動きに気づいているのかどうかは不明で、鈴仙様の方は秘密にされているために全く気付いていないらしい。鈍感なお方なのだ。
 さて、そうして苦労の末にゲットしたグッズを使ってオス兎どもが何をするのかと言うと、一言で言えば、まあ、右手の上下運動の添え物として使うのである。
 兎というのは食われやすい動物であるためか、素朴な外見に反して物凄く繁殖欲、要するに性欲が旺盛な動物だ。人型を取っているわたしたち妖怪兎においてもそれはあまり変わりない。わたしはその中でもとりわけ性欲が薄い方なのだが、それでも頻度は3日に1回ぐらい。それを仕事仲間に話したら「えっ、あんたそんなんでよく我慢できるね」と無茶苦茶驚かれたほどだ。
 そんな妖怪兎たちが永遠亭という広い屋敷で共同生活しているわけだから、当然その辺を厳しく取り締まらないとぽこぽこ子供が生まれたりして、いろんなことが立ち行かなくなる。男女間でそういう行為をする場合は事前にてゐ団長に申請を出して許可をもらうことが必要で、場所も地下にある秘密の部屋に限られる。決まりを破った者には厳罰が与えられるのである。監視のための特別隊が存在するほどで、その辺りは非常に窮屈だ。中にはそういう境遇に不満を抱いて家出する者もいるが、基本的にか弱い妖怪兎が寄る辺もなく生きていくのは難しく、結局すごすごと永遠亭に戻ってくることが多い。
 とは言え性欲なんぞそう簡単に抑えられるものではないから、どうしても処理する必要が出てくる。その対象がメス兎に向かったら子供がネズミ算のごとく増えていってしまうだろう。そこで考えだされたのがこの一案。
 つまり普通の兎では手が届かない三大美女に欲情させることでオスどもの欲求不満を平和的に解消させよう、という。割と上手くいっている辺り、なんとも言えない。ちなみにこの策の発案者はてゐ団長。さすが長老、オス兎の性質をよく理解している。
 そんなわけで、今現在この永遠亭のオス兎どもには大きく分けて三つの派閥が存在する。
 「姫様に弄られたい派」「永琳師匠に踏んでもらいたい派」「鈴仙様を守ってあげたい派」の三つだ。
 ちなみに外見の愛らしさでは三人に勝るとも劣らぬと思われる我らがてゐ団長は、

「え、てゐ団長? ねーよ」
「団長は子供の皮被ったババァだろ」
「団長はマニアックすぎる」

 という評価に落ち着いているらしく、オス兎たちのごく一部が密かに想いを寄せる程度だ。
 永遠亭にはオス兎たちだけでなく、わたしたちのようなメス兎も同じぐらい存在している。そんな環境下で一部の美女が偶像のごとく祭り上げられると普通はやっかみを買うものだが、実際はそんなでもない。
 姫様や永琳師匠は言うまでもなく雲の上の人だから、最初から自分と比べようという発想が浮かばない。だから羨望はあっても嫉妬はない。鈴仙様に関しては、それとは少し違う事情が存在する。

「あ」

 パンチラ写真の芸術性について夢中で喋りまくっていたバカが、不意に声を漏らし、慌てて写真を隠した。顔が赤くなっている。何だろうと思って振り向いてみると、長い廊下の向こうから鈴仙様とてゐ団長が並んで歩いてくるところだった。
 鈴仙様は、どこかしらわたしたち普通のメス兎とは違う雰囲気を持っていた。背筋がぴしりと伸びているせいだろうか。やけに凛々しい感じがするのだ。これで中身が普段から間抜けでなかったら、守ってあげたいというよりは守ってほしい兎になるのだろうけど。
 そんな風にわたしがぼけっと見ていると、その視線に気づいたらしい鈴仙様が不思議そうな顔で声をかけてきた。

「どうしたの、何か用?」
「ああいえ、別に、そういうわけじゃ」

 話しかけられたことに少し驚いて、わたしはちょっとどもってしまう。鈴仙様は首を傾げてから、わたしの後ろの馬鹿に気がついて、心配そうに眉を曇らせた。

「まだ治ってないのね。大丈夫?」
「はっ、い、いえ、勿体ないお言葉であります!」

 わたし以上にどもって、馬鹿が自由な片手で滑稽な敬礼を作ってみせる。顔は鈴仙様の瞳と同じぐらいに真っ赤っ赤。ちょっと焦り過ぎだ。どうせ「鈴仙様が俺のような卑しい兎に話しかけて下さった! 俺は三国一の幸せ者だ!」とかなんとか考えているんだろう。
 その上、「あ、なんかそれちょっと懐かしいかも」と鈴仙様が可憐に微笑んだので、馬鹿はいよいよ何も言えなくなってしまう。仕方がないので、わたしが話を続けた。

「鈴仙様、それにてゐ団長も。お揃いでどこに行かれるんですか?」
「ちょっと、師匠に呼ばれててね。話があるからって」
「そうですか。じゃあお時間を取らせちゃいけませんね。呼び止めるような感じになっちゃって、すみませんでした」
「ああ、いいのよ。時間にはまだ余裕があるから。それじゃあね。お大事に」

 最後の一言はまだ真っ赤なままのバカに向けられたものだ。ちなみに、終始てゐ団長は終始無言で気難しげな表情を浮かべていた。何やら悩み事があるらしく、普段のように鈴仙様をからかう様子もない。てゐ団長はいつも余裕綽綽なので、ああいう表情を見るとこちらまで不安になってくる。
 と、そんな二人の背中を、数人の兎たちが足音も立てずに追いかけていった。周囲を警戒するように厳しい目をしたメス兎ばかり。わたしたちには目もくれずに、鈴仙様たちを追って曲がり角の向こうに消える。
 ――あれが、鈴仙様がやっかみを買わない理由の象徴だ。鈴仙様ときたらあまり頻繁にパンチラを盗撮されたり、芸術的なまでの素直さでてゐ団長の悪戯を食らったりと素晴らしい間抜けっぷりを披露しすぎたものだから、一部のメス兎たちの保護欲を強烈に駆り立ててしまったらしい。以降、鈴仙様には特別な訓練を受けた隠密部隊が常に付き添っていて、パンチラ盗撮を狙う野郎どもと日々血で血を洗う激闘を繰り広げているとかいないとか。ちなみに彼女らを訓練したのは姫様だ。偉い人は暇つぶしのネタを常に探しているものらしい。

「ぶはーっ、緊張したー!」

 馬鹿がようやく立ち直って、盛大に息を吐きだした。そうしてから、にへらっと間抜けに頬を緩ませる。

「いやー、やっぱいいよなー鈴仙様。こう、守ってあげたくなるっていうかさー」

 ここにも保護欲を駆り立てられた兎が一匹。しかしちょっとお笑いだ。

「あんたね、そんな写真持っておきながらンなこと言っても、全然説得力ないっての」

 馬鹿はちょっとむっとした感じに唇を尖らせた。

「なに言ってんだ。俺は鈴仙様のパンチラ写真をそっちの目的で使ったことは一度もないぞ」

 いくら幼馴染だからって、一応メス兎であるわたしにこの馬鹿は何を言うのか。

「鈴仙様のパンチラはな、なんていうか、違うんだよ。あの人のパンチラには癒し効果があるんだ。心が洗われるパンチラなんだよ」

 恍惚とした顔でイカれたことを言い出したが、残念なことにこういう主張をするのはこの馬鹿だけではない。
 欲望とともに保護欲を駆り立てられたオス兎たちの中には、鈴仙様の写真を上下運動に使用することを最大のタブーとしている一派がいるらしい。彼らは鈴仙様のパンチラ写真に囲まれながらも徹底的なまでの禁欲を貫き通す生活を送っており、「鈴仙様のパンチラ写真を邪な目的で使わずに三年間過ごした者は仙人になれる」という変な教えを信じているんだとか。実際、最近やけに達観した透き通った表情をしているオス兎たちを見かけることがあって、ちょっと怖い。

「あんたはああいう風にならないでよ?」
「いやまあ、俺は鈴仙様だけじゃないし」

 それは喜ぶべきなのか悲しむべきなのか、とちょっと迷うわたしの前で、「あ、そうそう」と馬鹿がもう一枚写真を差し出してきた。

「お前の分も買っておいたんだ」
「貴重な給金を何に使ってんのあんたは」

 呆れつつも、一応写真を受け取ってみる。それは落とし穴に落ちかけた鈴仙様のスカートが思いっきり捲れあがっているという一枚で、やっぱりパンチラ写真だ。この人は本当によく落とし穴に引っかかる。確かに、こういう間抜けっぷりを見ていると「守ってあげたくなる」という感覚も理解できないではない。永遠亭兎組合の会報で「守ってあげたい兎」No1の座を堅守している実力は伊達ではないのだ、が。

(でも、違うんだよなあ)

 確かに、わたしも鈴仙様のことは好きだ。でも、その理由は他の皆とはちょっと違う。

「気に入ったみたいだな」

 気づくと馬鹿がニヤニヤ笑っている。どうやらわたしはぼんやりとパンチラ写真を眺めていたらしい。さすがにちょっと恥ずかしかったので、無言でパンチラ写真を突き返す。

「なんだ、いらないのかよ」
「当たり前でしょ。わたしをどういう趣味の女だと思ってんの」
「好きなんだろ、鈴仙様」
「そうだけど、わたしはそういう意味で言ってるんじゃ」

 そのとき、不意に廊下の向こうからドタドタと無邪気な足音を響かせて、子兎たちの集団が走ってきた。皆一様にきらきらと目を輝かせながら、止める間もなくわたしたちの横を駆け抜けていく。

「なんだ、あいつら?」

 眉をひそめる馬鹿の前で、わたしは嫌な予感を覚えていた。子兎たちのあの顔、間違いなく悪戯を企んでいる表情だった。仕事柄、わたしはその辺には誰よりも詳しいつもりである。

「やばいっ……早く止めないとっ」
「お? おーおー、そういうことね。じゃ、頑張ってこいよ」

 馬鹿がぴらぴらとのん気に手を振ったので、

「あんたも馬鹿やってないで、ちゃんと養生しなさいよ!」

 と言い残して、わたしは廊下を駆け出した。踵を返す直前、あいつが廊下の壁に立てかけていた松葉杖に手を伸ばすのが目に見えた。片足は骨折したままで、まだ治っていない。鈴仙様が「お大事に」と言っていた理由。
 ――少し前の異変の傷跡は、まだ永遠亭のそこかしこに様々な形で残っている。



 すばしっこい子兎たちにようやく追いつけたのは、奴等が目的地に辿りついて立ち止まったおかげだった。ぜいぜい息をしながら見てみると、そこは鈴仙様の私室の前だった。その前に子兎どもが群がって、リーダー格の男の子が命令を下すのを今か今かと待っているようだ。

「あ、あんたたち。何するつもりなのよ」

 歩み寄りながら声をかけると、「ゲッ、鬼ババだ」と誰かが漏らすのが聞こえた。わたしがそういう風に呼ばれているのは前々から知っているので、別に腹は立たない。それよりも、この悪ガキどもが今ここで何をしようとしているかの方がよほど重要だ。

「答えなさい。ここが鈴仙様のお部屋だってことぐらい知ってるでしょ? 何するつもりなのよ」
「パンツだよ」

 ちびっこい子兎が胸を張って答えた。またパンツか、とうんざりしながら、聞いてみる。

「パンツがどうしたの」
「警備隊の兄ちゃんが、『鈴仙様のパンツ取ってきたら1000てゐやるぞ』って」
「バカっ、鬼ババに喋る奴があるかっ」

 リーダー格の子兎が、企みをバラしたちびの頭をぽかりと叩く。だが時既に遅し、である。

(子供を使うなんて……どこの馬鹿よ、全く……!)

 さっきの幼馴染ではないだろう。と言うか、永遠亭のオス兎は基本的に性欲の塊なので、心当たりは多すぎるほどだ。今この場で犯人を特定しようとしてもしょうがない。
 ちなみに「てゐ」は子供たちにとっても魅力的な報酬だ。ブラックマーケットには子供向けの商品もある。1000てゐあればお菓子一か月分ぐらいにはなるだろう。
 だが、その夢のような話はここまでだ。わたしが来た以上、こいつらにそんな悪事を働かせるわけにはいかない。

「あんたたち、今すぐお部屋に」
「突撃ーっ!」

 わたしが制止するよりも早く、リーダー格の子兎が腕を振り下ろした。その場に集まっていた子兎たちが、歓
声を上げて部屋の中になだれ込む。しまった、止められなかった。

「こらっ、待ちなさいあんたたち!」

 慌てて部屋に飛び込むと、もうそこは嵐でも来たかのような大騒ぎになっていた。鈴仙様らしい控え目な色遣いの私室が、見る見る内に荒らされていく。子兎どもときたら、机や箪笥の引出しを片っ端から開けてみたり、ベッドの下に潜り込んでみたり物入れの箱をひっくり返してみたりとやりたい放題だ。早速下着類を見つけて「パンツみっけたーっ!」と喚いているガキもいる。

(……お仕置きが必要ね、これは……!)

 わたしは胸をそらして、大きく、大きく息を吸い込む。そして一気に、

「やめんかクソガキどもがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 と、叫んだ瞬間部屋の空気がびりびりと震え、子兎たちが一人残らず悲鳴を上げてその場に蹲った。
 これがわたしの持っている能力である。なんでも叫び声が極端に大きい上に子兎たちが嫌がる波長をしている、とかなんとかで、こうやって一喝で悪ガキどもを黙らせることができるのだ。ちなみにこの能力を活かして、子兎たちの教育係を務めている。
 とは言え、今は一応休憩中だった。子兎どもはお昼寝の時間のはずで、見張りは後輩に任せていたのだが。ちょっと抜けた奴なので、ガキは油断ならぬということをよく理解していないらしい。後できつく言っておかねばならない。

「ほらあんたたち、出た出た……こら、パンツは置いていきなさい!」

 パンツを取り返して元の場所に戻しながら怒鳴るわたしに「うるせー鬼ババー!」だのと喚き散らしつつ、悪ガキどもが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。元気なのは悪いことではないが、少々行き過ぎだ。

「まったく……」

 わたしは舌打ちしながら部屋の惨状を見回した。台風一過、とでも言おうか。散らかり放題だ。鈴仙様が戻られる前に片付けないといけない。余計な仕事が増えたものだ。
 そうして動き出そうとしたわたしの目が、ふとある物を捉えた。
 鈴仙様の机の一番上の引出し。悪ガキどもによって引き開けられたその中に、何か、黒いものが見えていた。武骨で金属的な光沢をもつ、何か。なぜか、酷く眼が引き寄せられる。
 わたしは腕が震えるのを感じながら、それを手に取っていた。ズシリと重たいそれが何なのか、わたしはおぼろげながら知っている。鈴仙様がこれを持っていることに、それほど驚きは感じなかった。むしろ、ああやっぱり、と不思議なほどに納得してすらいる。
 それの放つ禍々しい輝きから目を離せずにじっと見つめていると、不意に背後で声が上がった。

「うわ、何これ」

 聞き覚えのある声。わたしはほとんど無意識の内にそれを懐に隠しながら、慌てて振り返る。案の定、開け放たれた入口に鈴仙様が立っていて、驚いた顔で自分の部屋の惨状を見つめていた。

「申し訳ございません、鈴仙様。子供たちが」

 頭を下げながらそう言うと、鈴仙様はそれだけで大方の事情を察したらしい。「ああ、そういうこと」と苦笑いした。

「相変わらず元気な連中ねえ。あなたも大変ね、あんな悪ガキどもの世話をさせられるんだから」
「はあ、まあ。ええと、鈴仙様……」

 怒らないんですか、とわたしが問う前に、「そんなに気にしなくてもいいわよ」と鈴仙様は気楽に笑った。

「叱りつけるのはあなたたちがやってくれるんでしょ? それに、こんな悪戯なんて可愛いもんじゃない。てゐの凶悪さに比べれば何十倍もマシだわ」
「はあ、そうですか」
「ああ、でも」

 ふと気づいたように、鈴仙様は部屋のあちこちに目を走らせる。

「何か持ってかれてたりしたら、それは取り返してほしいかな。金目の物なんてそんなにないけど」

 わたしはどきりとして、思わず胸の辺りを押さえていた。手の平が、あの黒い物の硬い感触を伝えてくる。
 当然すぐに返すべきなのに、わたしはどうしてもそれを取り出すことが出来なかった。怒られるのが怖かったから、ではない。怖かったのは、もっと別のものだ。

「分かりました。調べておきますね」
「うん、お願い。さー、片付けなくっちゃ。悪いけど、手伝ってくれない?」

 鈴仙様の言葉に頷いて部屋の片付けを手伝いながら、わたしはとうとう、それを返す機会を逃してしまった。



 あれから三日後の夜。わたしは一人、憂鬱な気分で永遠亭の廊下を歩いていた。
 普段ならば皆が寝静まっている時間だというのに、そこかしこの部屋から灯りが漏れている。決まって数人の影が映り込む障子の向こうからは、大抵唾を飛ばして激論を交わす声が聞こえてきていた。

「上等じゃねえか、今度こそやってやろうぜ」
「でもよ、また怪我すんの嫌だぜ俺」
「じゃあまた巫女に好き勝手やらせんのかよ」
「だからって勝てねえだろあれには」
「いや、今度こそ十分に準備して、罠とか仕掛けてだな」
「無理だ、勝てるわけねえよ」

 やっぱり話題はあのことか、と、ついついため息が漏れてしまう。
 この三日間、永遠亭全体にある噂が不安と共に広まりつつあった。今やわたしが世話している子兎たちですら知っている始末で、わたしももちろん知っている。ひょっとしたら、感じている不安は皆よりも大きいかもしれなかった。
 そっと胸の辺りを押してみると、三日前と変わらぬ硬い感触が手の平を押し返してくる。噂が真実であることを教えてくれるかのようなこの黒い物体に、わたしはずっと悩まされ続けていた。

「っと」

 そんな風に想い悩みながら歩いていたせいか、わたしは廊下の角を曲がってきた誰かにぶつかってしまった。「ごめんなさい」と反射的に謝りながら顔を上げると、そこに鈴仙様が立っていた。わたしは驚きつつ、慌てて頭を下げる。

「すみません、ご無礼を」
「ああ、いいよ。わたしも余所見してたから」
「余所見、ですか」

 ある予感を覚えながらわたしが聞くと、鈴仙様はちょっと照れたように笑ってみせた。

「うん。ちょっとね、探し物をしてて。ああそうだ、あなたなら知ってるかな」

 わたしは唇を強く噛んだ。返したくない、という想いが胸を震わせる。
 しかし結局懐に手を伸ばして、この三日間わたしを悩ませ続けていた黒い物体を、鈴仙様に向かって差し出していた。

「お探しの物は、これではありませんか」

 鈴仙様は驚いたように瞠目していたが、やがてすっと目を細めて物体を受け取った。

「ええ、そう。そっか、やっぱりあなただったんだ」

 やっぱり、ということは、多少予想はしていたらしい。まああの状況で物がなくなったら、子供たちかわたしの仕業だと思うのは当然だろう。むしろ、今まで騒がずにいてくれたことに感謝しなければならない。

「理由、聞いてもいい?」
「はい。あの、わたしも鈴仙様にお聞きしたいことがあって」
「そう。じゃ、ちょっと座って話そっか」

 鈴仙様が身を翻して歩き出すのを、わたしは黙って追いかけた。通りすがった一室の障子から漏れ出す灯りが、鈴仙様の背中を闇の中にぼんやりと浮き上がらせる。頼りなく見えるほどに細く、しかし高い背中だ。それを見ていると、あの異変の夜のことがまざまざと脳裏に蘇ってきた。



 今から少し前のあの夜の事件は、「永夜異変」という名前で呼ばれているらしい。
 事の発端は、今回と同じくある噂だった。「月から使者がやってきて、鈴仙様を連れていってしまうらしい」という噂である。鈴仙様は元々月に住んでいた兎で、何かがあって月から逃れてきたらしいのだ。それで姫様に匿われて、この屋敷で長いこと暮らしていたのだとか。
 ところが何らかの事情で見つかってしまって、帰らなければならなくなった。しかし、鈴仙様は皆に慕われていたので誰もが引き止めた。子兎たちも泣き喚きながら彼女の体に縋りついて、寝る時も離れなかったほどだ。
 そういった行動のためか、鈴仙様は心を変えてここに残りたいと宣言した。わたしたちは誰もが喜んで、月の使者なんか永遠亭の力で追い返してやる、と息巻いたものである。
 しかし、迎撃態勢を整えた私たちに、永琳師匠は「来るのは月の使者ではないかもしれないわ」と告げたのだ。すっかり月の使者と一戦交える気になっていた私たちは少し戸惑ったが、実際、戦う相手が誰だろうが特に問題ではなかった。
 そう、相手が誰だろうがやることに変わりはない。大切な仲間であり、家族でもある鈴仙様を連れて行こうとしたり、傷つけようとする奴は、皆の力で追い返してやる、と。
 しかし結果は散々だった。その夜、月の使者の代わりに襲撃してきた巫女は恐ろしく強く、訓練された兎の精鋭部隊で構築された防衛線はあっさり崩壊。防衛部隊の指揮を執っていたてゐ団長や鈴仙様本人すらも倒されてしまったのである。
 あの夜のことはよく覚えている。わたしは非戦闘員だから戦列に加わることもなく、不安がる子供たちをなだめて安全な場所に隠れていた。そんなわたしたちの耳にも、悲鳴や怒号、住み慣れた我が家が壊されていく音は届いていたのだ。
 そうして全てが終わったあと、残されたのは巫女が暴れまわったために半壊した永遠亭と、そこかしこで倒れ伏す怪我人たちの呻き声だけだった。
 幸いなことに死者はいなかったが、臨時の治療所に怪我人を運んでいる間は怖くて仕方がなかった。ひょっとしたら誰か死んでしまっているのではないか、と。あの幼馴染みの馬鹿も、足を骨折する大けがを負った。治療所で寝ているあいつのそばに行ったら、悔しい悔しいと涙を流していた。それが悲しくて、わたしもつい泣いてしまった。
 本当に、怖い夜だった。わたしたちには事情が分からぬまま、姫様たちと巫女の間には和解が成立して、月の使者がやってくる恐れもなくなったらしい。要するに全てが丸く収まったらしいのだが、とても怖かったのは消えない事実。屋敷が壊されていくのを感じながら泣き喚く子供たちをなだめていたあのときの恐怖は、今もこの身に染みついている。
 あんなことはもう二度と起きてほしくない、と思っているのは、わたしだけではないはずだ。



 わたしたちは無言のまま広い庭に下り、隅っこにある大きめの石に腰かけた。月明かりが目に柔らかな、涼しい夜だ。微風が鈴仙様の髪を揺らすのを少しの間見つめてから、わたしは恐る恐る切り出した。

「それ、鉄砲、ですよね。人間が使う武器」
「よく知ってるね」
「幻想郷にも火縄銃ぐらいならありますし。それに、前に外の世界の雑誌を読んだことがあったので」
「そっか。うん、そう。これは鉄砲。拳銃って言った方がいいのかな。昔はこれを使ってたのよ」

 鈴仙様は拳銃を前に向けて、「バン」と撃つ真似をして見せた。自分でも吃驚するぐらい、わたしの体が大きく震える。

「ああ、大丈夫よ、弾は入ってないから」

 鈴仙様が慌ててなだめてくれたが、わたしの体の震えは止まらない。原因は、自分でもよく分かっていた。

「弾は、入っていないんですか」
「うん。危ないからね」
「でも、手入れはなさってるんですよね。いつでも使えるように」

 声までみっともなく震えていた。しかし、怖いのだから仕方がない。
 拳銃はよく磨かれていて、今も月の明かりの下で鈍い輝きを放っている。素人目にも、頻繁に手入れされているのが分かるほどだった。
 鈴仙様は震えるわたしを見ながら穏やかな微笑みを浮かべて、小さく頷いた。

「まあね。って言っても、最近までは机の奥にしまいっぱなしだったんだけど」
「では、いつから」
「あの異変の夜以来、かな」

 ああやっぱり。ますます体が震えてきた。鈴仙様が拳銃の手入れをなさっている、というのは、もはや疑いようもなく、あの噂が真実であることを示している。

「では、また戦いになるのですね」

 ほとんど確認するように問いかける。しかし鈴仙様は、なぜか非常に驚いた声で、

「はい? 戦いって?」

 見ると、鈴仙様はきょとんとした顔をしていた。多分わたしを驚かせないように気を遣ってくださっているのだろう。
 しかしわたしはかぶりを振った。わたしだって戦闘になれば子供たちを守らなければならない立場。ただ守られているわけにはいかないのだ。

「いえ、隠していただかなくても大丈夫です。わたしはこんなですけれど、一応、覚悟はしているつもりですから」
「は……えっと、いや、本当に、何を言っているんだか……?」
「だって、巫女が来るんでしょう?」
「巫女? って、霊夢?」

 あのとき襲撃してきた巫女の名前は博麗霊夢だったはずである。わたしが頷くと、鈴仙様は首を傾げた。

「うん、確かに、今週末来る予定になっているけど……それが、どうかしたの?」

 鈴仙様は驚くほど平然としている。普段間抜けな姿を晒しているから皆が忘れがちだが、やはり彼女も戦う人だ。覚悟が出来ているのだろう。
 しかし、わたしはそういうわけにはいかなかった。巫女が来る、という噂が真実だったと確信出来た途端、自分でも笑ってしまうほどの勢いで、体がガタガタと震え出した。

「ああ、やっぱりそうなんですね。また戦いになるんですね。皆、噂してるんです。また前みたいなことになるんじゃないかって。わたしもあんなことがまた起きるのかと思うと怖くて……!」
「え、ちょ、ま、待って!」

 鈴仙様が混乱した様子で、わたしに向かって手の平を突き出してきた。

「戦いとか、前みたいなことになるって……しかも、それを皆が噂してる? なんでそんなことになってるの?」

 混乱しきった様子の鈴仙様を見て、わたしはようやく少しだけ平静さを取り戻した。
 何か、妙な行き違いというか、食い違いがあるような気がする。そう思いながら、問いかけてみた。

「だって、巫女が来るんでしょう?」
「ええと、うん、まあ、そうだけど」
「あれからわたしも勉強しましたから。巫女は妖怪退治の専門家なんでしょう? そんなのがここに来るってことは、前の異変のときとは気が変わって、今度こそわたしたちを皆殺しに来るってことで」

 避難していた地下室から抜け出した時の屋敷の惨状と、朝焼けの空を飛び去っていく紅白の人影を思い出したら、また体が震えてきた。あんなのがまた来ると思うと、吐きそうなぐらいに怖くてたまらない。
 しかし鈴仙様は、そんなわたしを見て物凄く呆れたような顔をしていた。

「なーるほど、そういうこと。霊夢も怖がられたもんねえ。まああれだけ暴れた後だし、仕方ないと言えば仕方ないけど」

 ぼやくように言いながら、苦笑いしてみせる。

「違う違う、誤解よ誤解。巫女は戦いに来るわけじゃあないのよ」
「え、じゃあ、なんのために」
「うーんと、それはちょっと、言えないかなあ。一応プライベートなことで、あんなのにも恥じる心があるかもしれないし」

 鈴仙様は誤魔化すようにそう言ったあと、にっこりと笑ってみせた。

「とにかく、大丈夫よ。今回はちゃんとしたお客様だもの。前みたいなことには絶対ならないわ」

 鈴仙様の笑顔を見ていると、どうもそうらしいな、という気がしてきた。
 しかし、だとすると分からないことが一つある。

「あの、鈴仙様。お聞きしてもよろしいですか」
「なに?」
「巫女が我々を退治するために来るのではない、ということは分かりましたが……それじゃあ、どうして拳銃の手入れを始めたんですか。わたしはてっきり再戦の準備をしているものだと」

 だからこそ、鈴仙様に拳銃を返すことが出来なかった。禍々しい光を放つあの武器が、あんな戦いを引き起こしてしまうかのように錯覚してしまって……鈴仙様にあれを返したら、またこの人やオス兎たちが戦いに行って傷ついてしまうような気がして、とても怖かったから。
 子供じみた思い込みだと分かってはいたが、そういう恐怖が拭えなかったから、どうしても返せなかったのに。
 再戦の準備をしていたのではないとすると、鈴仙様は一体なぜ、あの異変の夜を境に武器の手入れなんかするようになったのか。

「覚悟の証、みたいなものかな」

 ぽつりと、呟くような声で鈴仙様が答えた。

「覚悟、ですか」
「そう。今度こそ戦おうっていう、覚悟の証」

 どういうことだろう、と困惑するわたしに、鈴仙様は「長くなるけど、いいかな?」と問うてきた。断る理由などもちろんない。わたしが頷くと、鈴仙様は思い出話を始めた。彼女が永遠亭に来るよりも前、月にいた頃から始まる、長い長い思い出話を。



 わたし、月にいたころは軍人でね。依姫様って人から、毎日毎日そりゃもう凄まじい訓練を施されてたのよ。それこそ寝てるときですら油断できないぐらいで、そんな生活にほとほと嫌気が差しちゃって。生まれつき臆病な性質だから、本物の戦場に行くのも怖かったしね。だから、地上から満月が見える夜に、思い切って逃げ出して来たの。
 それで、姫様と師匠とあなたたちが暮らしてたこの永遠亭にたどり着いたわけ。二人は事情を聞いたらわたしのこと迎え入れてくれたけど、正直、あまり感謝はしてなかったんだ。「どうせここもすぐ見つかるだろうから、そうなったらすぐにまた逃げ出そう」なんてね。そんな自分勝手なことばっかり考えてた。
 でも、わたしの予想に反して、月からの追手はなかなかやってこなかった。訓練なんてない、のん気で平和な毎日が穏やかに過ぎていくばかりで……ホント、幸せだった。
 この拳銃、月から唯一持ち出してきた武器なんだけどね。これを使う必要なんかなかったし、むしろこれを見るとあの頃のこと思い出して嫌な気分になるから、ずっと机の奥にしまいこんでた。こんなものわたしには必要ない、もう二度と見たくないって思ってたわ。
 だけど、そんな日々にも終わりがやってきた。あの異変の夜よりも少し前に、月からの通信が来たのね。詳しいことは言っても分からないと思うけど、とにかく、私に戻ってこい、戻ってこないと無理矢理連れ戻す、みたいな内容だった。だから、あなたたちが大騒ぎしてたのも、あながち勘違いではなかったのね。
 ここに来た当初と違って、わたしはもう逃げる気なんてほとんどなくしてた。姫様に師匠、皆のこと……永遠亭が好きになってたから、ここを戦場にはしたくなかった。だから素直に帰ろうとしたんだけど、皆に引きとめられて、子兎たちに泣きつかれて……結局、ここにいたいっていう自分の気持ちに従うことにしたの。
 それで……多分、ここからはあなたたちがよく知らない話だと思うんだけど、実は姫様たちにも、月の追っ手に見つかるわけにはいかない事情があったの。だから師匠は地上を大きな密室にして月から隠してしまおうっていう策を練っていて、わたしもその計画に乗ることにしたの。
 だけど、師匠は言ったわ。これだけ大きなことをやれば、幻想郷の誰かが勘付いて攻撃をしかけてくるかもしれないって。
 だからわたしはその日、久し振りに銃を取り出して埃を払った。それで誓ったの。
 わたしは、わたしの居場所を守るために戦おうって。
 今まで散々逃げ続けてきた奴が今更そんなこと、って恥ずかしかったから、誰にも言ってなかったけどね。



 鈴仙様は照れ笑いで思い出話を締めくくったあと、武骨な拳銃をそっと手で撫でた。

「だから、これは覚悟の証。武器を磨いて手に取って、これから何が来ようとも今度は逃げずに戦いますっていう」

 拳銃を見つめる鈴仙様の瞳には、普段の穏やかさとは打って変わった、真摯で勇敢な色があった。
 ああ、この目だ。
 わたしはこの目に惹かれたのだ。普段はドジで間抜けで守ってあげたくなるのに、いざとなると守ってほしいと思わせる、この勇者の瞳に。
 鈴仙様だけではなくて、オス兎たちもそうだ。普段はあんなに馬鹿でエロ心丸出しで格好悪いことこの上ないのに、あの異変の夜のオス兎たちは、わたしたちが胸を張って誇れるほどに勇敢だった。
 そう、この屋敷の戦う兎たちは、誰一人として欠けることなく、全員が勇敢な戦士だ。彼らの中にあるのは下心や馬鹿っぽさだけではない。その奥底には普段使われない立派な銃が、埃を被って眠っている。家族に危機が迫ったときだけ取り出されて磨かれて、敵を打ち倒すための武器となる。そんな素敵な銃が。
 もちろんこんなこと、あの馬鹿どもの前では絶対に口にしたくないけれど。

「鈴仙様」
「なに」

 わたしは精一杯の尊敬の念を持って、鈴仙様を見上げた。

「鈴仙様は、わたしたちのことを守るために戦って下さったんですね」

 わたしがそう言うと、鈴仙様は一瞬きょとんとしてから、腹を抱えて笑いだした。

「馬鹿ねえ、そんなわけないじゃない」
「でも」
「さっきも言ったでしょ、わたしはわたしの居場所を守りたかっただけよ。自分のためよ、自分のため。大体、わたしが誰かを守るために戦うような立派な兎に見える?」
「見えます」

 わたしが即答すると、鈴仙様は「え、あ、そう」と、照れたように頬を掻きながら、顔を背けた。赤くなった頬の熱を冷ますようにしばらくの間夜風に吹かれたあと、穏やかに微笑む。

「うん、でも、ここが好きだっていうのは本当よ。ここは、わたしが臆病者のままでも誰も怒らない場所だから。みんな、こんな情けない兎にずいぶん優しくしてくれるしね。だから、できればずっとここで暮らしたいと思ってる」

 安らかな声音で語る鈴仙様の横顔を見ていると、じわりと胸が熱くなった。
 戦うのが嫌で月から逃げ出してきたのに、逃げた先の地上で初めて戦うことを決意した兎。
 それは、最初から勇敢な人が戦う覚悟を決めるよりも、ずっとずっと勇気のいることなのではないのだろうか。
 わたしも、この人のようになれるだろうか。この人のように、戦う勇気を持つことができるだろうか。

「あの、鈴仙様」
「なに?」
「その銃、わたしも撃ってみたいです」

 鈴仙様が困ったように首を傾げる。

「弾は入ってないよ?」
「それでもいいんです」

 訴えの意図を察してくれたのかどうかは分からないけれど、鈴仙様は黙って頷いて、わたしの手に銃を持たせてくれた。ズシリと重たい感触が、今では少しだけ好きになれそうな気がする。
 鈴仙様がわたしの背中から手を回して、拳銃の構え方を教えてくれた。

「そう、そうやって両腕で持って、狙いをつけて」

 わたしは引き金に指をかける。銃口の向かう先、闇の中には誰の姿も見えない。わたしが狙うのは誰か。わたしの銃が吐き出す弾丸は何か。そんなことも分からないままに、

「バン」

 鈴仙様が静かな声で呟いた。わたしは無言で拳銃を下ろす。鈴仙様が軽く肩を叩いてくれた。

「戦う覚悟、出来たかな」

 わたしは答えられなかった。鈴仙様が穏やかに笑う。

「でもそんなもの、ここでは必要ないかもね。たまに大騒ぎして怪我しちゃったりもするけど、基本的には平和な場所だもの。霊夢だって、それだからこそまたここに来るんだろうし。いろいろ思うところはあると思うけど、ちゃんともてなしてあげてね」

 わたしにそう言ったあと、鈴仙様は両腕を夜空に伸ばして「うーん」と伸びをした。

「長話しちゃったね。そろそろ寝よっか」
「はい」
「あー、でも、そっか」

 鈴仙様が苦笑いする。

「それじゃあみんな、ずいぶん不安がってるのね。道理で最近、なんか屋敷全体の空気がぴりぴりしてると思った」
「巫女は怖いですから」
「そうかな。話してみると案外嫌な奴でもないよ。いい奴とはとても言えないけど」
「つまり変な奴なんですね」
「うん、それが一番しっくり来るわ」

 鈴仙様は微笑んだあと、「よし」と手を叩いた。

「じゃあ、ここはわたしが一肌脱ぎましょうか」
「えっ……そ、そんな、いくら皆を慰めるためとはいえそこまで」
「は? なんのこと?」
「ああいえ、別に何でも」

 しまった、最近パンチラ写真なんか見たせいで変な想像をしてしまった。
 鈴仙様は不思議そうにわたしを見て、それからちょっと誇らしげに胸を叩いた。

「この件はわたしに任せておきなさい。みんなのこと安心させてあげるわ」
「鈴仙様が、ですか?」
「うん。さっきのあなたの言葉聞く限りだと、わたしも結構みんなに信頼されてるみたいだし。任せておきなさいな」

 それじゃおやすみ、と言い残し、鈴仙様は拳銃をしまいながら歩き始めた。彼女の最後の言葉に少々不安を覚えつつも、わたしは黙ってその背を見送る。
 鈴仙様の背中はやはり頼りなく感じられるほどに細く、しかし高かった。誰よりも弱いが、だからこそ強い背中だ。
 永遠亭で一番間抜けで臆病な勇者に敬意を表して、わたしは深く頭を下げた。



 さらに三日後の昼、わたしはてゐ団長の呼び出しを受けて彼女の部屋に向かっていた。
 廊下の途中で、やたらと荒っぽい目つきをしたオス兎たちの集団と何度もすれ違った。廊下の隅っこに罠らしきものを仕掛けている者もいる。屋敷全体を包む雰囲気は、三日前と比べても確実に危険なものとなりつつある。
 多分呼び出されたのもそれが原因だろうな、と思いつつ、わたしはてゐ団長の部屋の前で来訪を告げる。
「入って」という声がしたので中に入ると、質素な部屋の真ん中に、気難しい顔で腕組みしたてゐ団長が胡坐をかいて座っていた。

「とりあえず、座って」

 わたしが正座すると、団長は眉間に皺を寄せた顔で重々しく言った。

「困ったことになったわ」
「ですよ、ねえ」

 わたしは曖昧に微笑むことしかできなかった。
 てゐ団長が言う困ったこと、というのは、いちいち確認するまでもなくこの屋敷内の現状である。
 何せ、三日前までは巫女と戦うか否かで意見が割れていたというのに、今ではほぼ一人の例外もなく徹底抗戦の道を選んでいるのだ。
 原因は、言うまでもなく鈴仙様である。
 彼女は三日前、「みんなを安心させる」とわたしに言っていた。その手段と言うのが、不安がっている兎たち一人一人の所を回って、「巫女は戦いに来るわけじゃない。戦いに来ることになってもわたしがやっつけてあげるから安心して」というようなことを説いて回ることだった。
 普段ドジで間抜けで保護欲を駆り立てるような鈴仙様らしからぬ、この健気で頼りがいのあるパフォーマンスは、多分彼女の想像以上の効果を生んだ。生んでしまった。
 鈴仙様の覚悟とわたしたちに対する愛情は、永遠亭の兎たちを一人残らず感動の渦に叩きこんだらしい。今や鈴仙様は「守ってあげたい兎」ランキングだけでなく、「今一番輝いてる兎」「守ってほしい兎」「抱かれたい兎」などなど、様々な人気ランキングの一位を独占状態。グッズの値段も高騰し、パンチラ写真の値段は500てゐから10000てゐに跳ね上がったそうだ。本物のパンツなんか入手した日には、もう価格がつけれらないほどの大騒ぎになってしまうだろう。
 そんな馬鹿騒ぎで終わるのならば問題なかったのだが、今週末……要するに明日には、あの巫女がこの屋敷を訪れることになっている。鈴仙様の話からして戦いに来るのではないと皆も分かっているはずなのだが、

「いいや、俺たちの鈴仙様を傷つけやがったあのクソ巫女め、絶対に許しちゃおけねえ!」
「そうだそうだ、今度こそあの巫女床に叩き落として、負わされた傷と壊された屋敷の恨みを晴らしてやる!」
「ついでに兎と人間のあいの子を孕ませてやろうぜ!」

 と、巫女憎しの迎撃態勢で一致団結しているらしいのだ。しかも全員が共謀して鈴仙様や姫様や永琳師匠たちには分からないよう秘密裏に準備を進めているというから性質が悪い。
 その熱狂振りは留まるところを知らず、「巫女に出す食事に毒を盛ってやる!」と喚いた兎が取り押さえられて、厨房が一時的に関係者以外立ち入り禁止になっている、という情報もあるほどだ。

「鈴仙ちゃんもやらかしてくれたよもう。ほとんど宗教だねこれは」
「危ない、ですよねえ」
「まあ一時的なものだろうけどね。でもタイミングが悪すぎだあ……」

 団長はそう言いながら頭を抱えている。この人はなんだかんだ言って気配りが細かいのだ。そうでなければ兎のリーダーなど務まらないから当然なのだろうが、外見とのギャップのせいで男からの人気が出ないというのも何となく頷ける。

「ともかく、だ」

 てゐ団長は眉間を指で揉みほぐしながら言った。

「こうまでなってしまった以上、何か、対応策を練らなくちゃねえ」
「皆を止めるってことですか」
「いや、それは良くない。こういうのは抑えつけるとかえって不満がたまっちゃうもんだよ。性欲と一緒だね。機を見て程よく溜まったものを抜いてやらなくちゃならないのさ」
「団長、その表現はいやらしいです」
「反応する方がエロなんですー。まあそれは置いといて、だ」

 てゐ団長の瞳が鋭くなった。

「だから、わたしは基本的に止める気はないね。殺意を持って攻撃するのはまずいと説明はしつつ、あちらさんが怪我しない程度の仕返しなら黙認してやるつもりでいるのよ。要するに手加減抜きで悪戯するってことね」
「それでみんなの気が晴れるんでしょうか」
「大丈夫でしょ。殺す孕ますと息巻いてるけど、要は自分らの手で巫女をみっともない姿にしてやりたいってだけだからね。わたしたち兎ってのは、元々気性が穏やかな動物だし。でもやり過ぎは良くない。あの夜だって、巫女はスペルカードルールの範囲内で手加減してくれてたんだ。あいつを本気で怒らせちゃったら、この屋敷の兎が一人残らず皆殺しになるかもね」

 その言葉が真実だということは、わたしもよく知っている。ぶるっと身を震わせながら、

「じゃあつまり、皆に仕返しさせつつ、巫女も怒らせないようにするってことですか?」
「そういうこと。さすが、上手く喋れない子兎ども相手にしてるだけあって、察しがいいね」
「ありがとうございます。でも、そんな方法があるんですか?」

 戸惑うわたしに、てゐ団長はにやりと笑ってみせる。

「あるよ。そのために、あんたを呼んだんだからね」
「え、わたし、ですか?」
「そ。この屋敷の兎の中で、今一番冷静なのは多分あんただろうし……何より、そのでかい声。相手の気勢を削ぐぐらいにデカいその叫び声が、今回一等役に立つのさ。ま、ちょっと耳をお貸しよ」

 てゐ団長から策を聞いたあと、わたしは無言で部屋を出た。誰もが物々しい雰囲気を放っている廊下を横切って庭に降り立ち、三日前に鈴仙様と話をした辺りに立つ。
 団長は、いつもわたしがやっていることと一緒だから心配するな、と言っていた。子供の相手をするようなものだと。
 わたしは親指と人差し指を立てて銃の形を作り、空中に思い描いた空想の巫女に向かって「バン」と弾を撃った。何故そうしたのか、自分でもよく分からないままに。



 そうして週末、予定通りにふわふわと空を飛んで、巫女が屋敷にやってきた。
 どことなく憂鬱そうな顔をした巫女が屋敷に一歩足を踏み入れた途端、兎たちは一斉に動き出した。先の異変ときとは打って変わってのん気に見えるほどに油断しきっていた巫女は、作動した罠や襲いかかる子兎たちの猛攻をほとんどノーガードで全弾喰らってしまった。上がり台に足をかけた瞬間そこに撒かれていた油のせいで転倒し、すかさず差し出された顔拓用の粘土の中に顔面からダイブ。なんじゃこりゃーと身を起こした瞬間四方八方から飛来した泥団子や無数の卵の直撃を喰らい、よろめいたところに浴びせられる特製汚泥水と腐りかけた生ゴミのコンビネーション。最後に何故か頭を直撃する金だらい。その後も様々なトラップの洗礼が絶え間なく浴びせられ、調子に乗った子兎たちが「ぱらりらぱらりらー!」と奇声を上げながら巫女を踏んづけて走り去っていった。
 嵐が過ぎ去った後に永遠亭の正面玄関に残されたものは、紅白の巫女服が無残にズダボロになり、髪は解けて全身泥と油と生ゴミと足跡まみれ、床に倒れ伏してぴくぴくと痙攣する巫女だけだった。一人の人間に対する仕打ちとしては明らかにやり過ぎである。わたし自身巫女に対しては多少憎しみと嫌悪感を抱いていたが、それが全部吹き飛ぶほどに哀れな様だった。
 だがそのおかげで、何の問題もなく仕事を成し遂げられる自信がついた。
 正面玄関のそばにある一室で事の成り行きを見守っていたわたしは、手荒い歓迎を受けた巫女がゆらりと身を起こそうとしているのを見て、素早く周囲に視線を走らせた。

(みんな、準備はいい?)

 控えている仲間たちが、一斉にこくりと頷く。わたしは大きく息を吸い込み、目の前の襖に両手をかける。
 開け放たれた襖が立てる、バン、という音を聞きながら、巫女の様子を素早く確認。彼女はもう完全に立ち上がり、自分の悲惨な有様を黙って見下ろしている。表情はよく見えないが、全身からじわじわと怒りの波動が放たれ始めているのは、いちいち確認するまでもなく分かる。
 タイミングを誤ってはいけない、と思う。遅れれば巫女が怒りを爆発させてしまうかもしれないし、速すぎれば上手くこちらのペースに巻き込むことが出来ないだろう。
 巫女が顔を上げ、怒りの咆哮を上げようと口を大きく開く、そう、この瞬間!

「申し訳ございませんでしたぁーっ!」

 綺麗に横並びに並んだわたしたちが、全身全霊の力を振り絞って叫びながら、一斉に頭を下げた。普段子兎どもを怒鳴りつけているわたしの大声も加味されて、物凄い声量だ。さすがの巫女も驚いたらしく、叫ぶのも忘れて目を白黒させている。

「え、なに」
「まあまあ大変ですわお客様」
「うちの子兎たちが大変なことをしでかしまして」
「まあお召し物がボロボロ」
「すぐに替えを用意させますわ」
「お風呂も用意いたしますので」
「さささ、どうぞこちらへ」
「え、いや、ちょっと」

 巫女が正気に立ち返るよりも早く、わたしたちは彼女を素早く部屋の中に引きずり込む。そして自画自賛したくなるほどの抜群のコンビネーションを発揮して、あれよあれよという間に彼女の服を脱がし体を拭き取り、元よりも綺麗に見えるぐらいまで清めきった。仲間たちがそうやって巫女の風体を直していく間、わたしは間断なく彼女に話しかけ続ける。

「いやいやいやいや、本当に災難でございましたわねえお客様。うちの悪童どもは本当に手に負えませんで。後でよく言って聞かせます。とは言え何分子供のすることでございますから、どうかお許しくださいましね」
「あのさ」
「まあまあまあまあ、可愛らしいお顔がこんなに汚れて……あちらに湯を立てておりますので、どうぞご利用下さい」
「そんなことより」
「あなた様をおもてなしするために、最高級のお酒も用意してありますので」
「……お酒?」

 ぴくり、と巫女が反応した。よし、情報通り! と心の中で拳を握りながら、わたしは今まで以上の速度で捲し立てる。

「はい、お酒でございます。我が永遠亭の輝夜様もご愛飲なさっている、最高級の」

 巫女がごくりと唾を鳴らした。分かりやすい反応だ。かなりの酒好きというのは本当のことらしい。

「……それは楽しみね、うん。お風呂っていうのはどっち?」
「はい、こちらでございます」

 目に見えて機嫌がよくなってきた巫女を、仲間に案内させる。その背中を見送って、わたしはひとまずほっと息をついた。
 物事にあまりこだわらない性格、と聞いてはいたが、ここまでとは思ってもいなかった。いくら不意を突いたとはいえ、あそこまであっさり機嫌を直してくれるとは。正直な話、ここで巫女が「ふざけんなぁーっ!」と叫んで暴れ出す確率の方がよほど高いと思っていたのだが。
 だが、安心するのはまだ早い。わたしは早速次の準備にかかった。手を二回打ち鳴らすと、廊下に控えていた兎たちが次々に料理を運びこんでくる。このために昨日から準備させていた、贅を尽くした料理の数々。値段に直すのも馬鹿らしくなるほどの超高級食材ばかりを使ったものばかりだ。巫女一人に食べさせるためと考えればずいぶん高いが、半壊した永遠亭の修繕費と比べればずいぶん安い。
 そうしてしばらくすると、風呂でたっぷり酒を飲んだらしき巫女が、顔を赤くして上機嫌に鼻歌を歌いながらやってきた。永琳師匠直伝のマッサージも施してやるよう指示していたから、尚更機嫌がいいのだろう。料理の山を見るなり目を丸くした彼女に、永遠亭の中でも選りすぐりの美形オス兎たちが速やかに歩み寄り、お姫様を扱うが如く恭しくエスコートする。巫女もちょっと澄ました表情で素直に従っている。満更でもなさそうだ。彼女が割と美形好きだという情報も本当だったらしい。

「いやー、ちょっとちょっと。いいの、こんなご馳走一人で食べちゃって? あとで代金請求しない?」
「いえいえ、そんなことはいたしませんわ。これは私たちのお詫びの心と、巫女様への親愛の念の証でございますから」
「ふうん。なんか胡散臭いけど……まあいいや、いただきまーす」

 胡散臭いと言っていた割には毒見を要求することもなく、巫女は大した健啖ぶりを披露してくれた。贅を尽くした料理の数々と、永遠亭の兎たち秘蔵とも言える酒が、次々と小さな少女の胃の中に消えていく。
 そんなこんなで、歓待は一昼夜ぶっ通しで続けられた。姫様と永琳師匠には、「是非とも永遠亭の兎総出で巫女様を歓待したいので、面会の日を一日ずらしてもらいたい」と伝えてある。二人とも快く了承してくれたが、何せ頭のいい人たちだから、こちらの状況や目論見など全てお見通しだったかもしれない。
 ともかくも、わたしたちの計画は万事恙無く進んだ。巫女は最初の手荒い歓迎のことなどすっかり忘れてしまったかのように終始上機嫌で、翌日特に何の問題もなく姫様らとの会見を終えた。
 そうして辞去する間際、あらかじめ用意されていた新品の巫女服を身に纏った彼女は、駄目押しに手渡したお土産の包みを手に、すっかりご満悦の様子であった。

「いやー、こんないい気分久し振りだわー。最近ちょっと便秘気味でそれ相談しに来たんだけど、ウンコと一緒に心まで洗い流されたって言うか」

 そんな風に、巫女はガハハと豪快に笑っていた。また酒飲んで酔っ払っていたせいもあるのだろうが、悩みの内容といい歓待の素直な受け取りっぷりといい、巫女とは思えぬほどの凄まじい俗っぽさだ。神々しさの欠片もない。しかし同時に、双方の過去の遺恨など毛ほども気にしない態度や、こちらが困惑するほどの機嫌の直しっぷりはどことなく浮世離れしているようにも思える。何にしても不思議な人で、様々な妖怪から好かれているという噂も何となく納得できるような気がしたものである。

「ところで、お客様」

 それでもどうしても不安になってしまい、わたしはどきどきしながら問いかける。

「お客様がいらっしゃったときの粗相の件なのですが」
「ん? いらっしゃったときって……あー、あれね、あの無茶苦茶な大歓迎ね」

 巫女は苦笑してぴらぴらと手を振った。

「いいって、気にしなくても。こんだけしてもらったら、十分お釣りが来るわよ」
「そ、そうですか」

 それにしたってあっさりしすぎではないか、と思っていると、巫女は「それに」と続けた。

「前の異変のときにあっちこっちぶっ壊しちゃって、それで恨みを持ってる兎がいるんじゃないか、みたいに永琳が言ってたし」
「永琳師匠が……」
「そう。ま、わたしとしてもネチネチ恨まれたりとかそういう重ったいのってあんま好きじゃないしね。これでお相子ってことでいいんじゃないの?」

 そう言って、巫女はにっこりと笑う。言葉の通り、その表情には欠片ほどのわだかまりも窺えなかった。
 ああ確かに鈴仙様の言うとおり嫌な人ではないのだな、と、わたしは一度納得しかけたが、

「その代わり」

 巫女が笑ったままで、

「次同じことやったら、今度は全力で喧嘩買ってやるけどね。今度は屋敷半壊じゃ済まないかもよ?」

 なんてことを冗談めかした口調で仰ったので、また恐怖がぶり返してきてしまった。正直言って笑顔が無茶苦茶怖い。わたしはぶんぶんと夢中で首を振った。

「は……はははは、はい、もも、もちろんです、子兎たちにもしっかり言って聞かせますので!」
「ん、ま、適当にね。それじゃ」
 
 そうしてわたしは永遠亭の門前に立って、空の向こうへと消え行く巫女の姿を見送った。紅白の点が完全に見えなくなってしまってから、ようやく安堵の息をつく。急ごしらえのおもてなし部隊だったが、なんとか任務を全うすることに成功した。これはわたしの功績というより、普段から兎たちの統制を保つ努力をしているてゐ団長のおかげだろう。
 そんなことを考えていると、不意に背後で大歓声が爆発した。
 驚き、何かと思って振り向いてみると、門と塀の上に数え切れないほどの兎たちが立ち並び、手を叩き口笛を吹き上げ中指を突き立て、馬鹿馬鹿しいほどの勝利の雄叫びを上げているではないか。

「イヤッホーッ!」
「ヒャッハァ!」
「ざまあみやがれ腐れ巫女め!」
「あの馬鹿女、まんまと騙されて帰っていきやがったぜ!」
「永遠亭の力を見たかーっ!」

 あまりの馬鹿騒ぎ振りに、ついつい苦笑してしまう。冷静に考えればせいぜい悪戯に成功した程度の仕返しで、しかも巫女を満足させるためにつぎ込んだ費用と比べると、どう考えてもこちらの損失の方が大きい。だというのに、なぜこうも喜べるのだろう。鈴仙様同様、どの兎も根本的には臆病で平和な生き物だということなのかもしれない。兎であるわたしが他人事のように言うのもなんだかおかしいが。

「よーっし、耳くそほじくってよーっく聞きやがれ、愛すべきイナバの兎ども!」

 と、いつの間にかわたしの隣に立っていたてゐ団長が、居並ぶ兎たちを見上げて声を張り上げた。

「『巫女をコテンパンにのした後盛大にもてなして恨みつらみもうやむやにしてしまおう大作戦』は見事に成功した! 我々の傷と半壊した屋敷の恨みは見事に晴らされたわけだ! というわけで今後は巫女に対しても一切恨み事はなしってことでいいね!」

 さんせーい! とその場の兎たちが全員声を揃えて叫ぶ。つくづくのん気というか平和な連中だ。まあ巫女の方もあの異変のことは特に気にしていないようだったから、まず理想的な決着を言えるだろうか。
 そんなことを考えていると、両肩にどっと疲労がのしかかってきた。考えてみれば二日前からずっと緊張しっぱなしの働きづめだった。これで全部終わったのだ、と思ったら、なんだか急に疲れてきたのである。早く部屋に帰って眠りたいところだ。

「お疲れさん」

 ぽん、と腰を叩かれた。見ると、隣に立ったてゐ団長がにっと笑ってわたしを見上げている。

「よくやってくれたよ。霊夢もずいぶん喜んでたし、わたしとしても鼻が高い。実に見事な歓待ぶりだったね」
「そうですか」

 そう言われてもまだ実感が湧かず、愛想笑いを浮かべる気力もない。しかしてゐ団長はそんなわたしの無気力振りを気にする素振りも見せず、労わるように言ってくれた。

「ホント、ありがとね。下手すりゃ怒った霊夢がまた大暴れしてたかもしれないもの。永遠亭の平和が守られたのは、間違いなくあんたのおかげよ。胸張って誇ってもいいよ」

 そう言われた途端、わたしの胸に熱い何かがこみ上げてきた。じわじわと、全身に震えが広がっていく。わたしは自然に、今も塀と門の上ではしゃいでいる兎たちを見回していた。
 普段はパンチラがどうのと騒いでいるこの馬鹿なエロ兎どもも、心の奥底に銃を隠している、と、わたしは思った。しかし、それは何も武器を手に取って戦う彼らだけに限った話ではなかったのかもしれない。
 てゐ団長がみんなの様子に気を配って秩序を維持しているのも、鈴仙様がドジと間抜け振りで皆の心を和ませるのも。わたしが子兎どもに勉強を教えたり、度を超えた悪戯を叱ったり、そして今回のように誰かをもてなして永遠亭の印象を良くしたりするのも。
 そういう全てが永遠亭を、わたしたちの居場所を守るための戦いなのだ。そういうことをするとき、わたしたちはいつも心の中で銃を構えている。形も大きさも弾き出す弾丸の種類もなにもかも違うけれど、誰もが大切な家族を守るための銃を、心に隠しているのだ。
 そういうことが、なんとなく理解できた気がした。
 そのとき不意に、バン、と大きな破裂音が鳴り響いた。誰もが驚き、一瞬この場がしんと静まり返る。音のした方を見ると、鈴仙様が門のそばに立っていて、細い煙を噴き上げる銃を空に向かって構えていた。突然のことに何も言えずに見つめていると、鈴仙様はこちらに歩み寄りながら言った。

「ああ、大丈夫よ。特別に空砲作っておいたから、弾が落ちてきて危ないってことはないし」

 別にそんな心配をしたわけではなかったのだが、多分わたしを安心させようとして、そう言ってくださっているのだろう。その穏やかな顔を見ていると、また胸が熱くなってきた。

「鈴仙様、今のはなんですか?」
「祝砲よ」
「祝砲?」
「そう。お祝いのための発砲っていうか……銃にはこういう使い方もある、ってことかな。こっちの使い方の方が幻想郷らしいかも」

 にっこり笑う鈴仙様の顔が、不意にぼやけ始める。気付けばわたしは泣いていた。安堵の涙だった。

「ど、どうしたの、急に」
「だ、だって、怖かったんですもの……!」

 慌てた鈴仙様の声に、嗚咽を漏らしながら答える。

「失敗するんじゃないか、巫女が暴れ出してまたみんなが怪我するんじゃないかって、もう本当に怖くって」

 ああ、みんなが見ているのにみっともない。そう思うのだが、どうしても涙が止まらない。今頃になって足が震え出してきて、自分がそれほどまでに無理矢理恐怖を抑え込んでいたのだと思い知らされる。

「……そっか。頑張ったんだね。偉い偉い」

 鈴仙様が優しい声で囁きかけながら、そっと抱きしめてくださった。それから苦笑交じりの声で、

「っていうか、ごめんね。なんかよく分かんないけど、わたしが皆を焚きつけるみたいな形になっちゃったみたいで」
「……鈴仙様のせいじゃないですよ。みんながバカなのが悪いんです」
「……そう。じゃ、その愛すべきバカたちのところへ、一緒に帰りましょうか」
「はい、鈴仙様」

 わたしは鈴仙様に支えられながら、震え続ける足を動かして、ゆっくりと歩き始めた。
 永遠亭へ。わたしたちの家族が待つ、愛しい愛しい我が家へと。















 ……と、ここで終わっていれば綺麗にまとまっていたのかもしれないけど。

「ああ、でも、ちょっと恥ずかしいなあ」
「なにが?」

 歩きながらわたしが呟くと、鈴仙様が不思議そうに首を傾げた。

「いやほら、みんなの前で泣いちゃって……なんか、格好悪いですよね。せっかく手柄立てたのに」
「あー、まあいいじゃない。たまには恥掻くのも悪くないもんだよ」
「おー、言うね言うね、鈴仙ちゃんが言うと実に説得力があるねえ」

 会話に第三者が割り込んできた。見ると、わたしたちの隣を歩きながら、てゐ団長が何やら納得顔で頷いている。

「なによてゐ。どういう意味、さっきのは?」
「恥っ掻きと言えば本来鈴仙ちゃんのお仕事だもんね。実に見事な業を披露してくれますよ、毎回毎回」
「誰のせいだと思ってんの、誰の」
「もちろんわたしのおかげですともよ。鈴仙ちゃんの芸術的なドジっぷりには、この私こと因幡てゐの存在が欠かせないわけでありまして」
「はいはい」

 呆れたようにため息をつく鈴仙様の隣で、てゐ団長の瞳が怪しく光った、ような気がした。
 なんだろう。なにか、非常に嫌な予感がする。

「あの、鈴仙様」
「ん、なに」
「と、いうわけで!」

 わたしが警告するよりも早く、てゐ団長がノリノリで叫んだ。

「鬱憤晴らしに性欲発散も兼ねて、今日も一発、ご披露してみましょうかぁっ!」
「へっ、なにを」
「てえええええええぇぇぇぇゐっ!」

 不意にてゐ団長が体を沈みこませたと思うと、鈴仙様に見事な足払いをかけた。「うわわっ」と悲鳴を上げた鈴仙様が、わたしを巻き込んで思い切り前のめりに倒れる。

「いたたたたた……」
「だ、大丈夫ですか、鈴仙様」
「だ、大丈夫大丈夫……ちょっとてゐ、一体何を」
「ああっ、鈴仙様っ!」

 わたしは悲鳴を上げた。「へ、なに」とその視線を辿った鈴仙様も、自分の状況を把握して絶句する。
 足払いをかけられて、わたしたちは前のめりに倒れ込んだ。巫女歓待用のユニフォームとして丈の長い着物を着ていたわたしはともかく、鈴仙様はいつも通りのブレザー姿だ。
 ここまで言えばもう分かるだろう。お約束通り、鈴仙様のスカートは思いっきり捲れあがっていた。わざとやってるんじゃないかと思うぐらいに、いっそ清々しいまでの捲れ上がりぶりだ。確かにこれは芸術と言えるかもしれない。ぷりんとした可愛らしいお尻を包み込む、白と緑の縞々パンツが何とも目の毒だ。

「うわっ、ちょ、いやっ、見ないでっ……へぶっ」

 慌てて起き上がろうとした鈴仙様が、足をもつれさせた揚句にまた倒れこんでさらに大きくスカートを捲れ上げさせる。なんてどんくさい人だろう。軍人としての訓練を受けていたとはとても思えない。だが平時がこんなだからこそ本気モードが格好いいわけで……なんて、のん気に解説していられる状況じゃあないか。
 わたしは鈴仙様を抱き起こすべくそばにしゃがみ込みながら、素早く周囲に視線を走らせた。
 まだ塀や門の上にいた兎どもは、誰もが不気味な沈黙を保っていた。しかし、全員の目が分かりやすいほどにある一点に釘づけになっている。もちろん、滑らかでおいしそうな曲線の上に添えられた、魅惑の縞々である。
 転んだ拍子に鼻をぶつけたらしい鈴仙様が呻く中、兎たちはなおも沈黙を守り続けていたが、ついに。

「ほ、ほ、ほ、ほああああああぁぁぁぁっ!」

 と、どこぞの馬鹿オス兎が意味不明な叫び声を上げたのを切欠として、ついにその沈黙が破られた。

「パ、パ、パ、パンチラだ! 鈴仙様の生パンチラだ!」
「バカ野郎、あれはパンチラじゃねえ、パンモロだっ!」
「どっちでもいいよそんなもん! お、おい、誰か、カメラ、カメラ持ってこい!」
「そんなもん用意してる暇があるか! 見ろ、今にもスカートの裾がずり落ちて魅惑の楽園への扉を閉ざそうとしているじゃあないかっ!」
「そんなことを許してたまるかっ! 総員突撃! 俺たちが夢見た楽園を俺たちの手で守るんだ!」
「おっちゃん辛抱たまらんわぁぁぁぁぁっ!」
「もう我慢できなぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!」

 などと、オス兎どもが雪崩のごとく門から飛び降り始めたかと思えば。

「させるかぁっ!」
「鈴仙様をお守りするのよ!」
「むしろパンツを守るのよ!」
「汚らわしいオスどもに指一本触れさせるもんですかっ」
「むしろわたしが揉みたいっつーの!」
「黙らっしゃい、鈴仙様のお尻はみんなのものよ!」
「ふかふかするの、あのお尻でふかふかするのぉーっ!」
「メスにだって性欲はあるのよぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 と、呼応するがごとくメス兎も津波のようにこちらへ向かってくる。
 ……おかしいな。普段通りなら鈴仙様を襲おうとするオス兎どもと守ろうとするメス兎たちとの戦いになるはずなのに、今はどっちとも危険な気がする。生パンチラ、いや生パンモロを見てしまったせいだろうか。皆さん目が非常に怖くていらっしゃる。
 パンツの魔力って偉大だなあ。わたしも今度から履いてみようかな。

「えっ、なに、なにがどうしたの、どうなってるの!?」

 そこかしこで醜い殴り合いが始まっているその真ん中、鈴仙様はすっかり混乱しきった様子でキョロキョロと周囲を見回している。自分が欲情の対象になっているとは夢にも思っていないらしい。いくらなんでも鈍感過ぎると思うが、まあこういうところもこの方の魅力と言えるだろう、うん。
 とりあえず鈴仙様を引っ張って争いの輪の外へと脱出しながら、わたしはため息交じりに状況を眺める。
 オスメス混じり合った凄まじい大乱戦の中にあって、鈴仙様がとっくにその中から脱出していることに気付く者は一人もいないようだった。まるで最後まで立っていた者が鈴仙様のパンツにありつけるというルールが出来ているかのような、世にも醜いバトルロワイヤルと化している。
 騒ぎの大元であるてゐ団長はと言えば、いつの間にか門の上に陣取り、そこで観戦している子兎たち相手にトトカルチョを開始しているようだった。教育に悪いので是非とも止めてもらいたい。
 よく見てみると、子兎たちの近くには姫様と永琳師匠まで座っている。姫様はいつもどおりにこやかな笑顔で、愚民どもの争いを天上から見下ろすがごとくだ。この方にとっては何もかもが暇つぶしにすぎないのかもしれない。一方の永琳師匠は、くんずほぐれつの兎たちを見てうっとりしている。この人が単なる兎フェチだという噂はやっぱり本当なんだろうか。
 まあとにもかくにも、争いは止める者もなく大きくなるばかりのようで。

「どどどど、どうしよう!? なんかよく分かんないけど、わたしまたなんかやっちゃった!?」

 涙目であたふたしている鈴仙様を、わたしは苦笑交じりに慰める。

「いやいやいいんですよ、鈴仙様はお気になさらなくても。さっきも言ったでしょ、みんなが馬鹿なだけだって」
「で、でも……ああやっぱり、と、止めないと!」

 走りだそうとする鈴仙様を、わたしは慌てて引き止めた。

「駄目ですよ鈴仙様!」
「なんで止めるの!?」
「今鈴仙様があの中に入っていったらあっという間にひんむかれて、とても画像ではお見せできない惨状になっちゃいますったら!」
「なんの話!? だ、大丈夫よ、わたしだって元軍人だし! わたしの居場所を守るために戦わないと!」
「居場所を守りたいんだったらここで大人しくなさってるのが一番なんですってば!」

 などと、わたしたちがぎゃーぎゃー喚き合っていたとき、どこからか何かが飛来して、鈴仙様の首筋にぶすりと突き刺さった。「うっ」と短く呻いて、鈴仙様が瞬時に眠りに落ちる。見ると、首筋に細い麻酔針が刺さっていた。咄嗟に門の上を見ると、永琳師匠が素知らぬ顔でそっぽを向いて口笛なんか吹いている。自分の弟子の貞操はきっちりガードする腹づもりらしい。感謝するべきかしないべきか。
 まあともかく、鈴仙様があの騒ぎの中に入っていく危険はなくなった。わたしはその場に正座し、眠りこけている鈴仙様の頭を膝に乗せてあげながら、ぼんやりと状況を眺める。
 醜い争いはまだまだ続いている。全員がぶっ倒れるまで続くのかもしれない。巫女が暴れるのは怖いわたしだが、こうして仲間の兎たちが殴り合っているのを見てもちっとも怖いとは思わない。なにせこんなもんは日常茶飯事、他愛のないじゃれ合いのようなもの。銃を突きつけ合って、戦争しているわけではないのだ。

(だから別に心配しなくてもいいんですよ、鈴仙様)

 わたしの膝の上で何やらうなされ始めている鈴仙様の頭を、そっと撫でてあげる。サラサラヘアーの感触が、なんとも言えず指に心地よい。こういうのを役得というのだろうか。今の鈴仙様は銃を構えているときとは比べ物にならないほど弱々しく可愛らしい兎さんで、保護欲を駆り立てられる連中の気持ちもよく理解できる気がするほどだ。
 わたしは格好いい鈴仙様の方が好きだけど、多分、本人にとってはずっとこっちの状態でいる方が望ましいんだろう。今は素直にそう思う。
 いつまで経っても終わる気配のない喧嘩を輪の外から眺めながら、やっぱりあのパンチラ写真貰っておけばよかったかな、と、わたしはふと考えたりした。



 <了>
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